ARBとACE阻害剤の併用はあり?尿蛋白改善がしても・・。

56歳男性、内科。

Rp1 アマリール(1)   1T
    ネシーナ(12.5) 1T
    1日1回朝食後   14TD

Rp2 オルメテック(20) 1T
    アテレック(10)  1T
    ラシックス(20)  1T
    コバシル(2)    1T
    1日1回朝食後   14TD

→今回からACE阻害剤のコバシルが追加。

「ARBとACE阻害剤の併用ってありですか?」

新人薬剤師君が言いました。

私 「場合によっては・・。」

ー患者さんの状態ー
HbA1c(NGSP):6.8%
血圧:142/78
クレアチニン:1.35mg/dL
尿蛋白:2+
カリウム:4.6mEq/L
先生から血圧高め尿蛋白が出てると話があった様。

とまぁ、この場合は特にめずらしい併用でもないと思います。
他の病院や他の医師から処方されたら疑義紹介するかもしれませんが・・。

併用の理由は下記の通りです。

CKD診療ガイド2012によれば、
『顕性アルブミン尿・高度蛋白尿症例においてARBとACE阻害薬が併用される場合があり、尿中アルブミン・尿蛋白減少効果に優れることが報告されている。
しかし、併用する場合にはeGFRの低下や、血清K上昇、および過剰降圧に十分注意する必要がある。』


今回のように尿蛋白が出てるなら、複合イベントに注意して使っていいですよ。ってことですね。
ただ、そんなにお勧めする書き方ではない??

その後ちょっと調べたところ・・。

おや!?

この併用に待ったをかける試験の結果が報告されました。

NEJM誌2013年11月14日号によれば、
ACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の併用療法は、蛋白尿がみられる糖尿病性腎症患者の末期腎不全への病態進行のリスクを低減せず、重症有害事象は有意に増加することが確認された。』
とのこと。
蛋白尿が減少することで糖尿病性腎症の進行が抑制されるとの仮説の検証を目的とした試験だったが・・。
併用により重症有害事象や高カリウム血症、急性腎障害が増えて、併用の優越性を示せる可能性がないと判断されたので、2.2年で試験中止とな・・。

これでARBとACE阻害剤の併用のメリットがなくなりましたね・・。


ついでに、高血圧治療ガイドライン2014でも、
『ACE阻害薬とARBとの併用は、単独投与よりも尿蛋白を減少させるというメタアナリシスの報告もあるが、ONTARGETでは、ACE阻害薬+ARB併用群では単独投与群よりも尿蛋白が減少するものの、透析導入、クレアチニン値の倍増、死亡はむしろ悪化するという結果であり、一般的にこの組み合わせの併用は推奨されない。
併用する場合には少量の併用から開始し、注意深い観察が必要である』

それから、2014年6月には、すべてのACE阻害剤とARBの添付文書に、
両剤を併用すると『腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧を起こすおそれがあるため、腎機能、血清カリウム値及び血圧を十分に観察すること。』と追加されましたね。
機序として、『併用によりレニンーアンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある』

とまぁ、結局、

併用で尿蛋白が減っても腎臓にはいい働きしてませんよ!

ってことですかね。
でも、実際、今回のように併用になっても、薬局では低血圧について注意するぐらいしかできないのかな・・。
あとは、病院でこまめに血液をチェックしていただくしか・・。

興味があれば ブログ一覧 もご覧ください。