ムコフィリン吸入液を造影剤の前に内服する理由。ガイドラインでは?
75歳男性、循環器科。
Rp1 ムコフィリン吸入液20% 3包
1日3回
検査の前日1検査当日朝1昼1内服
「ホントは飲む薬じゃないって聞いたけど、
何のために飲むんだい?」
ー患者さんの状態ー
ここ最近ときどき胸が痛むことある。
先生に言ったところ冠動脈造影検査することになった様。
今まで狭心症の薬は服用していない。
循環器科で出てた薬はミカルディスのみ。
初めてこの処方出た時は驚きました。
吸入を内服って!!
ただもう、この先生が高齢者や糖尿病のある患者さんの造影剤検査する時は、だいたいこのパターンになってます。
この時は、
「検査のため造影剤を投与しますが、その造影剤の副作用で腎臓を悪くすることがあります。
この薬は腎臓を保護する働きがあると言われており、その目的で使う場合は内服薬として服用します。」
と返答。
・・何でムコフィリンが腎臓を保護するの???
造影剤投与による腎障害のメカニズムについては十分に解明されていないが、腎臓の微小血管の収縮や造影剤のレオロジー特性が原因となって尿細管の低酸素状態が起こる機序と活性酸素が関与する直接障害が主な原因として考えられる。
N-アセチルシステイン(ムコフィリン)は強力な抗酸化物質であり種々のフリーラジカルを取り除く作用があるため、腎臓における活性酸素を介した直接障害を抑制することで造影剤腎症の予防に貢献していると考えられる。
(YAKUGAKU ZASSHIから抜粋)
とのこと。
そもそも造影剤腎症って確率どんなもん?
腎機能障害、糖尿病、脱水、高齢、慢性心不全、腎障害を有する薬物の使用、造影剤の過剰使用の危険因子がある患者では、
4~12%(健常人は1~2%)。
結構多いね。
今回の処方だと3包で約1000mg(1包352.4mg)しかアセチルシステインを服用してませんが、海外のデータだと2日合計で2400~4800mgとなってます。
他の循環器科の先生は使わないけど、ガイドラインでは推奨してるかな?
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009
の21章薬物投与に造影剤の記述があります。
造影剤腎症の発症予防に関して、現時点で最も推奨されるのは造影剤使用前後の輸液療法である。
N-アセチルシステインの併用は有効であるとする臨床研究も報告されているが、メタ解析の結果は相反している。
あらら・・。
特に推奨されているわけでもなかったのかっ・・。
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013
では、N-アセチルシステインのことすら削除されてますね・・。
やはり2013でも、生理食塩水の経静脈投与は造影剤腎症の発症を予防するため、造影前後の生理食塩水投与を推奨する。(推奨グレードA)
なので他の循環器科の先生からは処方されないんだ。