トラムセット、トラマール(トラマドール)と麻薬性鎮痛剤の違いは?

63歳男性、麻酔科。

Rp1 トラムセット配合錠    1T
    1日1回寝る前     14TD

Rp2 リリカカプセル(75)  2C
    1日2回朝食後、寝る前 14TD


「先生から麻薬みたいな薬出すって言われたけど、

麻薬とどう違うの?」

「さすがに麻薬なんて飲みたくねぇーよ。」

ー患者さんの状態ー
腰痛がひどく受診している患者さん。
最近症状がひどく痛みで夜寝れないとのこと。
前回までは疼痛時ボルタレンSPで対応していたが、
今回からトラムセット処方
ブロック注射もしているがあまり効果ないよう。

ですよね。
麻薬みたいな薬何て言われると気になっちゃいますよね。
こっちもトラムセット初処方の患者さんに説明するときは”麻薬”って言葉をどう使うか難しいところです。
この時は、

「先生が麻薬みたいな薬と言われたのは、麻薬と同じところに作用する薬と言う意味ですね。
ボルタレンSPで効果不十分だったとのことで、その次の段階で使用するような薬です。
麻薬に比べて作用がマイルドなので、副作用の便秘や吐き気も少ないですし、依存性もほとんどありません。」


と返答。


どう違うか薬剤師的にまとめときます。

トラマドールの作用機序(添付文書から抜粋)は、

『トラマドールは中枢神経系で作用し、トラマドール及び活性代謝物(O-デスメチルトラマドール)のμ-オピオイド受容体への結合、並びにトラマドールによるノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み阻害作用が、鎮痛作用に関与すると考えられる。』

となっています。

実際は、トラマドール自体のオピオイド受容体への親和性は弱く、代謝物であるO-デスメチルトラマドールが部分作動薬として作用しているようです。

ノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み阻害作用ってのは、最近抗うつ剤が注目されてますが下行性抑制系賦活作用ってやつですね。

作用機序の詳細は、
トラムセットとNSAIDsの併用は可能?作用機序を図で説明。
を参考にしてください。


んで、麻薬との違いは結局部分作動薬ってこととですかね・・。

他の非麻薬性鎮痛薬(ペンタゾシン、ブプレノルフィン)も部分作動薬ですもんね。

麻薬は完全作動薬です。

部分作動薬って天井効果(常用量以上に投与量を増やしても鎮痛効果が頭打ちになること)がみられるので、大量投与時の副作用において精神依存や呼吸抑制が起きにくく麻薬の指定を受けていないんです。
ただし、天井効果未満の等鎮痛量では麻薬もトラマドールも同程度の副作用が出るようなので注意は必要です。

下行性抑制系賦活作用ってトラマドール独自の特徴かと思ってましたが、近年、麻薬にも下行性抑制系賦活作用があると明らかになってるそうです。


2013年6月からトラマールの適応拡大で癌以外に慢性疼痛でも使用可能になりました。
よくわからないアセトアミノフェンが入っているトラムセットよりも、トラマドール単独のトラマールの方がよっぽど使いやすくなったと思いますが・・。
隣の病院では慢性疼痛にはトラムセット、癌性疼痛にはトラマールって処方が未だに多いですね。

しまいにはトラムセットにカロナール追加してみたり、PL顆粒が出たり・・。
これって疑義照会?とか思いつつ・・。

さらに、1日1回のトラマドール塩酸塩徐放製剤のワントラム錠ってのが2015年6月に発売されましたね。
まだ、処方になったことはありませんが、隣の病院での採用も時間の問題かと・・。


今回の投薬は麻薬に対して抵抗のある患者さんでしたので、安心感を重視してしまった感がありますね。
その中で副作用の情報ももっと入れた方がよかったかな・・。

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