認知症に対する抑肝散の注意すべき副作用。低カリウムや横紋筋融解症。

77歳男性、精神神経科。

Rp1 アリセプト(5)     1T
    1日1回朝食後     28TD

Rp2 ツムラ抑肝散エキス顆粒  5g
    1日2回朝食前、寝る前 28TD


「漢方って副作用ないよね?」

ー患者さんの状態ー
アルツハイマー型認知症でアリセプト継続中。
最近、不眠や怒りっぽく攻撃的になるようなことあり、今回から抑肝散処方追加。
認知症に対する行動・心理症状(BPSD)への処方。
易怒性、興奮、攻撃性、幻覚、不眠などに有効らしい。)
薬の管理は娘が行っているので服薬状況は良好。
今回の薬の受け取りも↑の質問も娘さん。
併用薬は、ブロプレス、フルイトラン他。

漢方=副作用なし
って、
これは『あるある』な質問ではないでしょうか?

そんなことはない副作用はあるよ!!

・・とは言っても西洋薬より副作用が少ないのも現状で、
「甘草が少なきゃ、OK、OK、問題ない」と思っていましたけど・・。
この時は、

「そうですね。
そんなに心配ないと思いますが、副作用が出るとしたら胃腸障害かもしれません。
朝は食前に服用の指示ですが、本人からの訴えや家族から見て食事の量が減っるなと思ったら食後に飲ませてみてください。
続くようなら先生に相談してくださいね。」


と返答。


しかし、横から薬局長が・・。

「ん?この方、フルイトラン飲んでるよね?

低カリウムの話しもした方がいいんじゃないか?」

と私に・・。


え?いる?その説明!?

冷や汗かきながら一通り説明しましたけど・・。


こっちとしては、
抑肝散5g中、甘草は1gしか入ってないし、
フルイトラン服用中と言ってもブロプレスとの併用で低カリウムは相殺されているでしょうし・・。
説明は不要かと思いましたけどね!!

ブーブー思いつつ一応、いろいろ資料をあさってみました。

・・ん!?

漢方医薬雑誌Vol.21にこんな記事が・・。
『抑肝散を服用してる患者さんの約26%に低カリウム血症が見られる。』

抑肝散何gとかどれぐらい継続してるとか、詳細は載っていませんでしたが、

頻度高っ!!

そこには続けて、
『高齢者、特に高血圧症を合併している患者さんでは利尿薬を含む降圧剤を服用しているケースが多く、さらに抑肝散が併用されると低カリウム血症を発症しやすい。』と・・。

ほうほう、今回の患者さんもそうですけど・・。


しかも、

低カリウム血症が進み血清カリウム値が2.0mEq/Lを切ると横紋筋融解症のリスクが非常に高くなる。


2014年の2月に抑肝散の重大な副作用の改訂があり、

ミオパチーの項に横紋筋融解症が追記されていますね。


うーん、こりゃ、低カリウムの説明必要かぁ・・。
薬局長に完敗です。
漢方の副作用を軽く見ていましたね・・。

抑肝散投与1ヵ月後に病院で血液検査してくれるのが一番わかりやすいですが、薬局では、低カリウム血症及び偽アルドステロン症の初期症状として、むくみや手足のだるさ、しびれ、血圧の上昇などあると説明できるといいですね。

特に女性の高齢者で利尿剤を服用している方、低身長で低体重の方など注意が必要のようです。


抑肝散以外の認知症の周辺症状に効果のある漢方

抑肝散加陳皮半夏
抑肝散よりも虚弱な方へ。食欲の増進も見込める。

釣藤散
血管性認知症に伴う幻覚、妄想、不眠、せん妄。
アルツハイマー型認知症に伴う頭痛、イライラ。

黄連解毒湯
血管性認知症に伴う易怒性、不機嫌、うつ、不安。

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