TS-1は食後じゃなきゃダメ?空腹時と食後の差は?ゼローダは?

60歳女性、外科。

Rp1 ティーエスワンOD錠T20 4T
    1日2回朝夕食後    14TD


「食事とれなくても薬だけ飲んでいいよね?」

ー患者さんの状態ー
胃癌の術後補助化学療法としてTS-1を服用中。
胃を全摘している様。
食欲なく、なかなか食事が摂れないとのこと。
当薬局からTS-1を出すのは2回目。
それ以前に何クール服用していたかは不明。
サイクルは4週服用2週休薬。

うーん、TS-1が食事の影響を受けるなんて聞いたことない。
「大丈夫ですよ。」と即答したいところですが、
薬が薬なので慎重に・・。
隣にいた薬局長へ念のため相談。

私 「薬局長。TS-1は空腹時でも問題ないですよね?」

薬局長 「できれば、何か少しでも食べてから飲んだ方がいいですよ。」

と返答。

そうなの?

何で??

ちょっと調べてみましょう。


添付文書の<用法・用量に関連する使用上の注意>に、

基礎的検討(ラット)において空腹時投与ではオテラシルカリウムのバイオアベイラビリティが変化し、フルオロウラシルのリン酸化が抑制されて抗腫瘍効果の減弱が起こることが予想されるので食後投与とすること。

あっ、書いてあった!!

ほうほう、効果が減弱してしまうのね・・。


・・・オテラシルカリウムって何だっけ??

TS-1についてちょっと復習。

TS-1はテガフール、ギメラシル、オテラシルカリウムの合剤

テガフール:5-FU(フルオロウラシル)のプロドラッグ。
ギメラシル:5-FUの分解をおさえて効果を高める。
オテラシルカリウム:5-FUの強い抗腫瘍効果を損なうことなく消化管障害を軽減する役目。


ん?復習してもなお添付文書にかいてある内容は「へぇ~」って感じ・・。


製造販売元の大鵬薬品のHPには、

空腹時に投与した場合、フルオロウラシルのリン酸化抑制作用を持つオテラシルカリウムの吸収が増加し、TS-1の抗腫瘍効果が減弱することが懸念されることから食後投与となっています。
吉田肉腫皮下移植ラットで摂食後投与での腫瘍増殖抑制率98%に対して、空腹時投与ではTS-1非投与に比べると有意な抗腫瘍効果はあるものの65%と効果の減弱がみられました。

腫瘍増殖抑制率=(1-薬剤投与群の平均腫瘍重量/コントロール群の平均腫瘍重量)×100(%)

この%はよくわかりませんが、添付文書よりはわかりやすく書いてますね。

とまぁ、こりゃ、積極的に食後に飲んでと言った方がよさそうですね。

あまりうちの薬局では出ない薬でですが、これぐらいは知っておきたいところ・・。


ちなみに、ゼローダ(カペシタビン)も用法が食後になってるんだよなぁ。


ゼローダは何で??

食後投与時のCmaxは絶食時に比べ減少したがAUCではほとんど差が認められなかった。
しかし、国内外で実施された臨床試験は全て食後30分以内に経口投与し、有効性・安全性が確認されているため、ゼローダは食後30分以内に服用する用法・用量で承認されている。


とな。
こっちはあまり食事に関係なさそうです。


最後に、TS-1のジェネリックの適応症はまだ少ないので変更は注意しましょう。

興味があれば ブログ一覧 もご覧ください。