ビスホスホネート長期服用で骨折のリスクが高まる?5年で休薬?FRAX?

71歳女性、整形外科。

Rp1 エディロール(0.75) 1C
    1日1回朝食後     28TD


「前のアクトネルって長く飲んだらダメなの?」

ー患者さんの状態ー
今までアクトネル(17.5)を服用していた。
服用を開始して6年ほど経っている。
骨密度は年に1回ぐらい測定しているが特に医師から説明は受けてない様。
今回、アクトネルの長期服用はよくないとだけ医師に聞かされ、 エディロールに変更になったとのこと。

ちょっとの期間続いた、怒涛のビスホスホネートからプラリア皮下注への変更の波もおさまり、整形外科は平穏でしたが今度はエディロール??w
この変更も今後増えてきそう?
この時は、

「通常、骨は新陳代謝しており、古い骨を壊して新しい骨が作られます。
アクトネルは古い骨が壊されるのを抑えるので、長い間この薬を服用すると古い骨が壊されずに残り、結果脆い骨になってしまうそうです。」


と返答。


この説明では全然イイ薬に聞こえませんね。

あくまで、今ビスホスホネートで問題となっているのは非定型大腿骨の骨折
非定型大腿骨骨折とは、大腿骨の骨皮質が厚くなっているにも関わらず、全く外傷がないか、軽微な外傷が原因となって骨幹部が折れてしまう通常ありえないような骨折のこと。
メカニズムとしてはだいたい↑で言ったような内容ですね。
ビスホスホネート製剤は破骨細胞の働きを抑え骨吸収を減少させるが、骨形成促進作用はないので骨の新陳代謝が阻害され古い骨が蓄積してしまう。
その結果、非定型大腿骨骨折が増えるのではないかと言われています。

ビスホスホネートと非定型大腿骨骨折との関係を調査した試験が行われています。
Increasing occurrence of atypical femoral fractures associated with bisphosphonate use.

この試験では、

  骨折者数 ビスホスホネートの
服用歴があった人数
割合 (%)
非定型大腿骨骨折 39 32 82.1
定形大腿骨骨折 438 28 6.4

非定型大腿骨骨折者が39人いたがそのうち82.1%でビスホスホネート製剤の服用歴があった。
こりゃ、ビスホスホネート製剤が関係してると一目瞭然ですね。

さらに、服用の年数が2年未満、2~5年、5~9年、9年以上と年数が上がる群ほどリスクが増加していることが示されている。
でも、非定型骨折の割合は低くて100万人/年 当たり32例しかない。
とな。
100万人/年ってこの単位(翻訳)がよくわかりませんが、まぁ、非定型大腿骨骨折自体少ないってことですね。

とまあ、こういう試験の結果を受けてか、日本でも5年をめどに休薬すべきという考えが広まっているそうな。

ただ、2015年9月の日経DIにこんな話しが・・。
「5年をめど休薬すべき」という考え方は誤解。
ビスホスホネート製剤を休薬することで得られる非定型骨折回避のメリットと、休薬することで生じる脆弱性骨折のリスク。
この2者を個々の患者で評価した上で、治療継続か休薬か決める必要がある。
とのこと。

確かに、そんなに多くない非定型大腿骨骨折のためにビスホスホネート製剤を5年でバッサリ中止していくのはちょっと・・。
と思います。

FDA医薬品評価研究センターのMarcea Whitaker氏も、
「この薬剤の効果は明白。ただし、その有効性を最大限に発揮し、リスクを最小限に留める最善の投与期間については解明されていない」
と言っており、今のところ個々の状態に合わせて期間を決めるしかないですね。
Marcea Whitaker氏のお言葉はこちら↓
骨粗鬆症薬ビスホスホネートの長期使用についてはさらに研究が必要

今回のアクトネル→エディロールの変更もこの人に合わせた変更だったのでしょう。
もうちょっと気の利いた説明ができるよ準備しておきたいところ・・。


最後に、

FRAXのご紹介・・。

皆さんご存じかもしれませんが、
骨密度の検査なしに、10年以内の骨折発生のリスクが測定できるツールでございます。

測定は↓のサイトでできます。
FRAX WHO 骨折リスク評価ツール

結果の"Major osteoporotic"(骨折確率)が15%以上で薬物治療検討だそうです。
ただし75歳以上の女性では9割以上の方が15%を超えるため使えないとな・・。

うちの薬局の待合室にFRAXの電卓みたいなの置いてますが、やってる人見たことない・・。

興味があれば ブログ一覧 もご覧ください。